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2025.11.21
株式会社JTBグローバルアシスタンス

「台湾有事」発言から考える、企業が ”いま”すべきこと

米中対立と台湾の民主化を背景に緊張が高まる中、近年はナンシー・ペロシ元米下院議長の訪台などで軍事・経済両面の危機が深刻化し、さらに117日「台湾有事は『存立危機事態』になり得る」と首相が国会で答弁したことで中国が猛反発、日中関係に新たな緊張が生じています。日中関係の先行きの不透明感が高まりつつある今、台湾をめぐる過去を時系列で振り返り、また何が起こっているのか知ることで、「いま企業がすべきこととは何か」を考察します。

1.台湾をめぐる動き(2019年~2024年)

2019年

6月に香港で発生した、逃亡犯条例改正案への反対をきっかけに、民主化を求める大規模な市民デモが発生し、この動きは、香港における一国二制度や自由のあり方への不安から広がり、台湾世論にも大きな影響を与えた。中国への警戒感が高まり、台湾市民は蔡英文政権の対中強硬姿勢が支持された。

2020

1月の蔡英文の再選では「台湾は中国に屈しない」という強いメッセージが、台湾と米国との関係をさらに緊密化させました。トランプ政権下での台湾への武器供与の継続や、その後のバイデン政権における対中強硬政策が、中国による軍事演習の増加につながっている。

2022

近年で最大のトリガー(きっかけ)が発生した。

8月に、ナンシー・ペロシ元米下院議長の訪台である。このとき、中国は台湾周辺で過去最大規模の軍事演習を実施し、ミサイルを日本EEZに着弾させるなど、緊張が急激に高まった。

そして同年10月、習近平国家主席は第20回共産党大会で、「最大の誠意と最大の努力を尽くし、平和的な統一の未来を実現するが、決して武力行使を放棄はしない。あらゆる必要な措置をとるという選択肢は残す。」と強調し、さらに「祖国の完全な統一は必ず実現しなくてはならず、また必ず実現できる」と表明した。

2023

台湾総統選挙に向けた中国の圧力強化と中国軍機の台湾防空識別圏(ADIZ)侵入が過去最多を記録。

2024

1月の台湾総統選で頼清徳氏が勝利。民進党の継続政権を「独立志向強化」と見なした中国は、軍事演習を再び拡大した。

2.緊張感が増す日中関係~直近の動き

2025年1031日の日中首脳会談から3週間、日中関係は急激に冷え込み、悪化している。

3週間の日中両国の動きをまとめると次のようになる。


【 日中関係~直近の動き  (2025年10月下旬~11月上旬)】

10/31

日中首脳会談で習近平国家主席は、「中国と日本は一衣帯水の重要な隣国であり、中日関係の長期的で健全かつ安定的な発展を推進することは、両国民と国際社会の普遍的期待に合致する。」と述べたと、中国外交部が発表。

11/01

韓国で開催されたAPEC首脳会議で、高市首相が台湾代表と会談したことに対し、中国外交部の報道官は「台湾独立勢力に重大な誤ったシグナルを送るものであり、その影響は甚大だ」と批判。

11/03

中国が日本人の短期滞在ビザ免除措置の延長を発表。

11/05

日本産水産物の輸入を一部再開すると6月に発表、11月5日北海道産の冷凍ホタテが中国向けに出荷再開。

11/07

高市首相が台湾有事をめぐって「存立危機事態」になりうると国会で答弁。

11/08

駐大阪の中国総領事が、SNSで総理発言を批判。

11/14

中国外交部は自国民に対し、日本への渡航を控えるよう注意喚起を発出。その理由として「日本の指導者らが台湾に関する露骨な挑発的発言を行い、在日中国人の身体や生命の安全に重大なリスクをもたらしたため」と説明。

11/15

香港当局は香港市民に対し、日本を訪問する際は安全に注意するよう注意喚起を発出。

マカオ政府旅遊局は「日本における中国人への襲撃事件が増加傾向にある」とし、警戒強化を呼びかけた。

11/16

中国教育省は、「日本の治安と留学環境が良くなく、日本における中国人の安全リスクが高まっている」などとして、日本への留学計画を慎重に検討するよう呼びかけた。

11/17

在中国日本大使館は、中国に滞在している邦人に安全確保に努めるよう注意喚起を発出した。

11/18

文部科学省は、中国の日本人学校などに対し現地在留の児童や生徒、留学生の安全確保の徹底を求める通知を発出。

11/19

中国政府が、日本産水産物の輸入手続き停止措置。

国家安全省は、高市首相の国会答弁を強く非難、さらに「中国の統一に武力介入しようとする野心は高度に警戒するに値する」と主張し、「国家分裂を図ろうとする陰険なたくらみは断固として粉砕する」よう捜査員らに命令したと発表。

                                                    (作成日:2025年11月20日)

3.今後の予測

現在の状況から急転直下の関係改善は難しいと予測されます。

短期的には、外交的な応酬や非公式な圧力が強まる可能性があります。

長期的には、これまで同様の認知戦、サイバー戦を継続すると予想されます。

4.企業が「いま」すべきこと

○バックアップ回線を準備し、冗長性を確保する

台湾周辺で20232月に2本の海底ケーブルが切断され、また今年1月には台湾本島と馬祖諸島を結ぶケーブルをタンザニア籍商船「興順39」が断線し、2月には台湾本島と澎湖諸島を結ぶ台澎3号ケーブルをトーゴ船籍貨物船「宏泰」が断線するという事案が発生しています。まずは現在使用している通信手段を確認し、必要な場合はバックアップ回線の準備をします。

○判断に資する情報源の確保

台湾有事は認知戦ともいわれています。偽情報に惑わされてしまうと、最悪の場合は命にかかわる誤った判断をしかねません。偽情報に惑わされないための情報基盤を整えることが重要です。駐在員からの情報提供、ニュースサイトのほか、政府公式発表、国際機関、危機管理コンサルタントなど、正確性が担保された情報を常に参照し、複数の情報ソースでクロスチェックをするようにします。

○移動手段、備蓄品リストの作成

最寄りの避難場所(シェルター)や大使館の場所、また空港や港までの移動手段など、万が一のときに場当たり的に対応することがないように、予め退避計画を準備しておきます。また退避計画とあわせて、一時的に安全な場所に避難することを想定し、備蓄品準備も必要になります。さらに、事案ごとに行動・判断基準表(トリガー表)を作成し、日本本社と現地会社間で共有することで、緊急事態に判断を迷うことなく、すばやく行動に移すことができます。

5.まとめ

「平時からの備え」が命を守ります。

有事が起きるか、起きないかを予測するのはとても困難です。「起きたとき」に冷静に対処するために重要なことは、情報・連絡・移動・物資の4つを軸に、危機管理体制を整えることが重要といえます。

JTBグローバルアシスタンスでは、世界中で発生している様々なリスクをリアルタイムで通知し、企業のリスクマネジメントを支援する危機管理サービス「アラート☆スター」を提供しております。

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本記事は、共同通信、ロイター通信、中国外交部発表、外務省、JETROなど、複数の信頼できる公開情報を基に、株式会社JTBグローバルアシスタンスが分析・編集したものです。(作成日:2025年11月20日)