はじめに
日本企業は、先進国をはじめ、経済発展の途上にあり、急速に成長しているタイやベトナム、フィリピン、インドネシアなどの新興国への進出を加速しており、海外に従業員を派遣する機会はますます増えています。海外出張や現地法人での勤務など、海外での営業活動とあわせて、欠くことのできないのが「海外にいる従業員の安全確保」で、重要な経営課題となっています。自然災害、テロ、感染症、政情不安などの突発的に発生するリスクをいち早くキャッチし、企業が取るべき「初動=安否確認」について、解説をします。

1.なぜ安否確認体制が必要なのか?
海外従業員の安否確認は「企業の安全配慮義務」
海外勤務者にも日本の労働契約法第5条に基づく安全配慮義務が適用されます。この義務には、海外の治安や健康リスクを考慮した予防措置や、メンタルヘルス対策、事故や災害発生時の対応体制の整備が含まれます。つまり、社員の安全を守る体制を整え(予防措置)、災害や事故が発生した際に迅速かつ的確に安否を確認し、必要な支援を行う(対応体制)ことは、海外へ進出するための「必要な条件」といえます。また危機管理広報の観点からも、リスク発生時に迅速かつ的確に安否確認をすることは、社内外への影響を最小限に抑え、信頼を維持・回復させるために必要です。
安否確認はBCP(事業継続計画)の中核
安否確認は、BCPの初動対応において最も重要な要素の一つです。リスク発生時に安否確認をしないことによるマイナス影響は多岐にわたります。個人の安全確保の遅れから、組織の機能不全、法的な責任問題に至るまで、様々なリスクが存在します。
■人命に関わる影響(被災者の救助遅れ、残留家族の不安や心配・・・など)
■組織運営・事業継続への影響(事業復旧の遅延、従業員のモチベーション低下・・・など)
■法的・社会的な影響(安全配慮義務違反、企業の信頼失墜・・・など)
特に海外では、通信インフラや言語など、日本との違いが障壁となり、安否確認や情報収集などが困難になる場合も想定し、リスク発生時に即応できる体制整備が不可欠です。

2.安否確認体制の構築ステップ
Step 1:
海外で発生しているリスク情報や国際情勢の動向をキャッチ・収集・分析する判断に資する確かな情報ソースを確保する
情報はキャッチするだけでは意味がありません。複数の情報ソースから、リスクと判断するに資する情報のみを収集し、リスクの分類(治安、災害、感染症など)と発生頻度などを分析します。
海外で発生しているリスクをキャッチ・収集・分析し、情報を提供「アラート☆スター」
Step 2:
安否確認発動基準を整備し、発動対応の部門を決定する
安否確認発動基準(トリガー)を整備し、発動対応の部門を決定する
Step1をベースに、トリガーを整備します。次に、安否確認対応をする部門を決定し、それらをBCPに盛り込みます。
Step 3:
従業員の居所と緊急連絡先を一元管理する
「だれが・いつまで・どこにいて・緊急連絡先」を一元管理し、BCPの実効性を高める
緊急時は時間との戦いです。リスクの影響下にいる従業員を洗い出し、さらに緊急連絡先を確認し、連絡するまでの対応に手間取っていては、「“72時間の壁”のタイムリミットまで残り僅か」という事態にもなりかねません。発生しているリスク、その影響下にいる従業員と緊急連絡先をすばやく把握できるよう、情報の一元管理が、初動対応に大きな影響を与えます。
海外リスク情報・影響下にいる渡航者と緊急連絡先を一元管理「アラート☆スター」の特徴
Step4:
リスク発生をキャッチし安否確認を発動する
リスクは夜間・休日を選ばない、リスク発生時は速やかに安否確認を実施する
リスク発生をキャッチしたら、まずは安否確認発動基準と照らし合わせ実施をします。あとは、報告内容や報告ルートなど、BCPに基づき対応をします。
Step5:
安否確認発動後の対応
迅速に従業員の状況を把握と必要な救援をする
被害状況を確認し、被災者への必要な救援と出社可否の判断、事業継続または早期再開のためにすべきことなど、冷静に対応をします。状況によっては、被災地から退避させるかの判断をし、必要に応じて旅行会社やアシスタンス会社などのサービスを活用します。

3.まとめ
日本に限らず、海外でも緊急事態においては、従業員や帯同家族の安全を確保することと、事業の早期復旧を可能にするのは、「予見・予防・計画」と「速やかな初動」です。
JTBグローバルアシスタンスの「アラート☆スター」は、安全管理体制構築に必要なサービスを提供し、貴社の従業員の安全をサポートするためのサービスを提供しています。
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出典
1:外務省/外交政策/「海外進出日系企業拠点数調査2024年調査結果(令和6年10月1日現在)」より引用 https://www.mofa.go.jp/mofaj/ecm/ec/page22_003410.html
2:在ベトナム日本大使館などの公式情報や各社メディア情報より引用・まとめ https://www.vn.emb-japan.go.jp/itpr_ja/11_000001_02015.html
3:在フィリピン日本大使館情報および各社メディア情報より引用・まとめ https://www.ph.emb-japan.go.jp/itpr_ja/11_000001_01975.html
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